成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

元気になるオルソペディック ブログ

不眠に悩む高齢者必見!睡眠の質を劇的に高めるおすすめ運動ランキング【医師解説】

睡眠良好.JPG


【高齢者の不眠に効果的な運動はどれ?最新研究から見えた最適解】

年齢とともに眠りが浅くなった、夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪い......。こうした「不眠」の悩みは、高齢者にとって非常に身近な問題です。

日本を含む多くの国で、不眠は高齢者の約30~50%にみられるとされており、QOL(生活の質)を大きく低下させます。

そんな中、タイ・マヒドン大学による最新の研究が、不眠改善にもっとも効果的な「運動の種類」を明らかにしました。

この記事では、その研究結果をもとに「高齢者におすすめの運動」「なぜ効果があるのか」「実際のやり方」などをわかりやすくご紹介します。


【なぜ運動が高齢者の不眠に効くのか?】

高齢者の不眠に対しては、薬に頼らず改善する「非薬物療法」が推奨されています。

とくに「認知行動療法(CBT-I)」が有効ですが、専門の医師や心理士が必要で、継続が難しいという課題もあります。

一方、運動は誰でも手軽に始められるうえ、うつや高血圧、糖尿病など他の病気の予防にもつながるメリットがあります。

今回の研究では、60歳以上の高齢者2170人を対象に、以下のような運動がどの程度不眠に効くのかを比較しました。

■調査された運動の種類

  • 有酸素運動(ウォーキングや水泳など)
  • 筋力トレーニング(スクワットや腕立てなど)
  • バランス運動(一脚立ち、綱渡り風の歩行など)
  • 柔軟運動(ストレッチやヨガなど)
  • これらを組み合わせた「複合運動」

睡眠の質の指標として「PSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)」という信頼性の高い評価尺度を用いて、どの運動がどれだけ睡眠の質を改善できるかを比較しました。


【筋トレが最も効果的!睡眠改善に効く運動ランキング】

研究の結果、すべての運動は「何もしない」よりも睡眠の質を改善する効果があるとわかりましたが、特に効果が高かったのは以下の3つです。

高齢者の運動療法筋トレなど.png

第1位:筋力トレーニング(筋トレ)

  • 効果の大きさ(SUCRA):94.6%
  • 例:スクワット、ダンベル運動、椅子を使ったレジスタンストレーニングなど
  • 特徴:週2~3回、1回30~60分、10週間以上の継続が効果的

筋トレは、体力向上だけでなく、成長ホルモンや深部体温の調整を通じて入眠をスムーズにし、深い睡眠を促すと考えられます。

第2位:睡眠教育(スリープエデュケーション)

  • 効果の大きさ:81.4%
  • 例:寝室環境の見直し、カフェイン摂取の制限、就寝リズムの整備
  • 特徴:医療者からのアドバイスによって実施されることが多い

寝る前の習慣を整えるだけでも、睡眠の質が大きく変わることがあります。

第3位:有酸素運動

  • 効果の大きさ:67.3%
  • 例:ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など
  • 特徴:1回60分以上、週3回以上、10週間以上の継続で特に効果が大きい

特に長時間(60分以上)の運動を週に100分以上行うと、劇的な改善が見られるという結果も出ています。


【どんな人にどの運動が向いている?医師の視点からアドバイス】

睡眠を改善するための運動は、すべての高齢者にとってメリットがありますが、以下のような選び方をすると効果が高まります。

若い女性の筋トレwalking.png

●体力に自信がある方 → 筋トレ中心で!

高齢者でも無理のない範囲で行う筋トレは、睡眠の質だけでなく、転倒予防や筋力維持にもつながります。

椅子スクワットや壁押し腕立てなど、器具がなくてもできるメニューがおすすめです。

有酸素運動ランニング.JPG

●軽い運動から始めたい方 → 有酸素運動がおすすめ

ウォーキングや軽いダンスなどは、習慣化しやすく、気分転換にもなります。外に出ることで日光を浴び、体内時計を整える効果も期待できます。

●習慣を整えたい方 → 睡眠教育も有効

運動と合わせて、就寝時間や照明の使い方、昼寝の長さを見直すことで、より良い睡眠につながります。

●効果を感じやすい期間

週2~3回の運動を「10週間以上」続けた人に、明らかな改善が見られました。逆に、短期間では効果が出にくいこともあるため、継続が大切です。


筋トレ睡眠良好.png

【まとめ:運動は最強の"睡眠薬"かもしれません】

今回の研究は、「どの運動が高齢者の不眠改善にもっとも効果的か?」を科学的に比較した貴重な報告です。

ポイントは以下の通りです:

  • 筋トレが最も睡眠改善に効果的
  • 次いで有酸素運動、睡眠教育も有効
  • 週2〜3回、10週間以上の継続がカギ
  • すべての運動において、薬に頼らない安全な治療法

薬に頼らず、体を動かすことで自然な睡眠を手に入れる。そのために、まずは「週に2回、30分の軽い運動」から始めてみてはいかがでしょうか。

https://naruoseikei.com/blog/2025/02/excersise30min.html


【引用論文】

Bahalayothin P, Nagaviroj K, Anothaisintawee T. Impact of different types of physical exercise on sleep quality in older population with insomnia: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. Fam Med Com Health. 2025;13:e003056. doi:10.1136/fmch-2024-003056

 

免責事項

  • 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
  • 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
  • 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
  • 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。

当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。